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2013年1月

2013-01-25

百合語り #49(アメコミ語り #37): I Was Kidnapped By Lesbian Pirates From Outer Space #1 (Megan Rose Gedris/2008年/Platinum Studios Comics)

あらすじ

「私は大学を出て秘書という素晴らしい仕事に就いた普通の女の子。でも全てが変ってしまったの……レズビアンな宇宙海賊に攫われてしまった時から!!!」

 ある日、仕事で遅くなったスーザンは真夜中の道を歩いて帰宅することになる。そんな彼女の後を付ける黒い影。勇気を出して振り返るそこには一人の女が立っていた。安心したのもつかの間、彼女が奇妙な銃を取り出したのを見てスーザンは気絶してしまう。

 目覚めると、先ほどの彼女と共にスーザンは銀色に光り輝く見知らぬ部屋にいた。もう一人ドクター・ウェンディと呼ばれる女の子が入ってきて注射されそうになるも、何とか部屋から脱出、逆に二人を閉じ込める。

 出口を求めて彷徨うスーザンは次々にヴェルマ、マージ、アリスという女の子たちに出会う。そしてアリスによって衝撃の事実を知らされる。

「私は海賊に攫われてしまったの!?」

「そうですわ」

「しかもあなたたちは宇宙から来たの?」

「そうですわ。そして私たちはみんなレズビアンですの」

「レズビアン!?」

 結局鎮静剤などの助けもあり、落ち着いて船長(スーザンを攫った最初の女の子)の話を聞いたスーザンは自分が彼女たちの仲間であることを知る。

 そんなスーザンに自分たちの海賊稼業の様子を見せようと彼女たちは次の星へと向かう。

感想

 元々Webコミックスとして公開されていた漫画が書籍化、その電子書籍版がiVerse社の電子書籍アプリComicsPlusで公開されていたのでそれを読んだもの。ちなみに公式サイトでは今も無料公開されている上、第3章(現在電子書籍化されているのは第1章のみ)まで話が進んでいるのでそちらを読めば事足りる。

 カラリングも含めてちょっとレトロな感じなので(流石にデフォルメはそうでもないが)、まあ割と多くの人が楽しめるんではないだろうか。

 というわけで簡単なキャラ紹介。

Susan

スーザン: 主人公。仕事が忙しくてカレシなんていないと言っているものの、地球の職場の同僚ウルスラに「あなたみたいな可愛い子にカレシがいないなんて信じられない!」と言われて(ウルスラってほんと可愛い! 彼女に可愛いって言われちゃった!)と思ったりする辺り何処まで自覚があるのやら無いのやら。海賊達の仲間と思われているものの触覚もなく、海賊達自身もまだ断定まではできていない模様。

Captain_3  

キャプテン: 一話目では名前は呼ばれずにただキャプテンと呼ばれていた海賊団の船長。スーザン誘拐実行犯。自分たちがレズビアンの宇宙海賊であることを自分の口から明かしてスーザンをびっくりさせたかったらしく、アリスに先を越されたのを知るとスーザンの記憶を消そうとするなど随分子供っぽいところもある。しかし、夜道で振り向いてこんな格好の人物がいたらいくら女だからといって警戒するのが普通だと思うのだが……だから誘拐されるのか。

Wendy

ウェンディ: この海賊団の船医。眼鏡っ娘。今の所はそれくらい。ちなみに頭に生えている触覚は彼女たちのトレードマークらしい。

Velma

ヴェルマ: 自分の姿が映る鏡のような船内に驚いていたスーザンに「私もあなたくらい可愛かったら自分の姿に見とれてたかも」と声をかけ、「あら大変! 私と一緒に来て、濡れた服を脱がなきゃ!」と言いながら手持ちの飲み物をぶっかけて自分の部屋に連れ込み服を脱がせにかかる手練れ。

Marge

マージ: そんなヴェルマの突っ込み係、なのだろうが実際はどう見てもヴェルマが他の女の子に手を出すのが許せないようにしか見えない。ありがとうございました。宇宙船の操縦士でもあり、おそらくはこの海賊団の切り込み隊長でもあるのだろう。ちなみにWhat in Sappho's nameはWhat in God's nameのGodを古代ギリシアの詩人サッポーに置き換えただけだと思われる。

Alice

アリス: 海賊団のエンジニア。スーザンの脱走騒ぎの中、一人静かに『パイレーツ・ダイジェスト』を読んでいたり、恐慌に陥りかけたスーザンを落ち着かせるなど、海賊団の中で一番理知的で落ち着いた人物なのかも知れない。

アメコミ語り #36: Marvel Now! Point One #1 (2012年/Marvel Comics)

表題: NYSE

制作陣

ライター: ニック・スペンサー
アーティスト: ルーク・ロス
カラー・アーティスト: リー・ラフリッジ

あらすじ

 マリア・ヒルに呼び出されたニック・フューリーJr.とエージェント・コールソン。

 ニューヨーク証券取引所に突如現れ3時間のうちに世界経済を動かすまでの取引をしてみせた謎の男をシールドが捕まえたところ、彼が100年近い先の未来からやってきた存在で全てはニック・フューリーにだけ伝えると言ったためにフューリーは呼び出されたのだった。

 男は自身の言葉通り、フューリーに対して未来からの警告を、これから起きる出来事への警告を伝える。そして「コビク」という謎の言葉を発っするのだった。その時になってようやく男の中に何か別の存在が居ることに気付いたフューリー達だったが、時既に遅く謎の存在は突入してきたシールド隊員の体を次々と乗っ取り他の隊員を射殺していく。コールソンが体が乗っ取られる際瞳孔拡張が起こることを発見したお陰で何とかホストごと謎の存在を射殺できたのだが、事態を重く見たヒルはフューリーたちに宣言する。

「アベンジャーズ計画について話す時が来たようね」

表題: ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー

制作陣

ライター: ブライアン・マイケル・ベンディス
ペンシラー: スティーブ・マクニーブン
インカー: ジョン・デル
カラリスト: ジャスティン・ポンサー

あらすじ

 20年前のウィスコンシン。

 帰宅したピーター・クィル少年が玄関先で母親に呼び止められる。何かあったのかと聞く母親にナンパされた女の子を助けるために喧嘩したことを告白したピーター少年はそのまま二階へと上がっていく。その時、家の前の森に強烈な光が現れる。訝しむ母親の目の前に現れたのは二体の銃を持った異星人だった。

「スパルトイの血統は根絶やしにせねばならぬ」

 母親を射殺した異星人達はさらにピーター少年の命を狙う。母親の寝室まで逃げてショットガンで異星人を倒したピーター少年だったが、そこで母親が隠し持っていた謎の銃を手に入れる。そして異星人の宇宙船に家を破壊される前に何とか逃げ出すのだった。

表題: ダイアモンドヘッド

制作陣

ライター: ジェフ・ローブ
ペンシラー: エド・マクギネス
インカー: デクスター・ヴァインズ
カラリスト: マルテ・ガルシア

あらすじ

 新ノヴァが夜空を駆ける。ニューヨークからセントルイス、リトルトンへと「自分は何者なのだろう」と自問しながら。

 ユタ州モニュメント・バレーにさしかかったところで突如「てめえは何者だ!?」という声とともに敵の襲撃を受ける。

 敵の名はダイアモンドヘッド。かつて何度もノヴァと戦い刑務所送りにされたヴィランだ。死んだと聞いていたノヴァをテレビで見て復讐のためにニューヨークからずっと追いかけていたのだという。

 そのノヴァは僕じゃないという主張にダイアモンドヘッドは耳を貸さず戦闘になってしまう。経験不足からか圧倒されてしまう新ノヴァだったが、ダイアモンドヘッドがヘルメットを手にかけると発言したことからとまばゆい光を放って彼をノックアウトする。

 そして意識を取り戻したダイアモンドヘッドに今度ちょっかい欠けてきたらアベンジャーズを呼んでやると脅しをかけた上崖の上へと置き去りにしてノヴァは飛び去っていくのだった。

表題: 新世界

制作陣

ライター: キーロン・ギレン
アーティスト: ジェイミー・マッケルヴィー with マイク・ノートン
カラー・アーティスト: マシュー・ウィルソン

あらすじ

「アタシはアース212にいた」

 そう述懐しながらミス・アメリカことアメリカ・チャベスはコリアンタウンに降り立った。韓国焼肉店である人物と会うために。

「こっち、こっち! ミス・アメリカ! 遅かったから先に注文済ませちゃったよ!」

 その人物とはロキ。ミス・アメリカが別世界の住人であったこと、彼女がこれまで体験したことを知っていることをそれとなく言及した後、魔法でウィッカンの姿をだしながらながらある取引を持ち出す。

「マルチバースのためにもこいつがいない方がいいと思わないかい?」

 それを聞いたミス・アメリカはおもむろにロキの首を掴むとそのまま頭を鉄板の上に叩き付け、さらには瞬間移動で難を逃れたロキを瞬時に追撃して殴り飛ばす。

「アンタも彼も監視してやる。もしアンタがなにかしようとしたら、ここでやろうとしたことを本気でやるわよ?」

 そう宣言してミス・アメリカは去って行くのだった。

表題: 芸術だ!

制作陣

ライター: マット・フラクション
アーティスト: マイケル・オールレッド
カラー・アーティスト: ローラ・オールレッド

あらすじ

昔……二代目アントマンことスコット・ラングは幼い娘キャシーにマルセル・デュシャンの『L.H.O.O.Q.』(ヒゲを描き加えた『モナ・リザ』)を見せながら芸術についた語っていた。

「芸術というものはね、誰かが芸術だといったらそれが芸術で、それはばかげたものである時だってあるものかもしれないものなんだ。そしてばかげたものだって認められることがあるんだよ」

 そんな話を聞きながらキャシーは父親との写真にピンクのペンでヒゲを描き加えていた。「パパ、大好き」という言葉と共に。

そして今。

「ヴィクター・フォン・ドゥームが私の娘を殺した。この言葉を正気を保ったまま大声で出せるようになるまで6週間もかかったんだ」

 スコット・ラングはジョニー・ストーム(ヒューマントーチ)とその恋人ダーラと共にラトヴェリア芸術展のパーティに来ていた。二人には内緒で小さくなってダーラのまつげに潜みながら。ささやかな復讐のために。

 翌日、芸術展の会場ではドクター・ドゥームの肖像画にピンク色のヒゲが描き加えられているのが発見される。

表題作: クレイジー・イナフ

制作陣

ライター: デニス・ホープレス
アーティスト: ガブリエル・ヘルナンデス・ウォルタ
カラリスト: デビッド・クリエル

あらすじ

「君は一日中そうやって私に話しかけるつもりなのかい? それとも私の手助けをしてくれるのか? それと私をスキッチと呼ぶのは止めてくれ。私の名前はフォージだ」

 廃墟の中で脳内の謎の声と会話を繰り広げていたフォージは自分の作ったものではない壊れた機械を発見して、修理に取りかかる。首尾良く機械の修理を完了すると、今度は突然機械から脳みそがあふれ出てきたものの、それも何とか止めることに成功する。

「よくやった、スキッチ」

 謎の声ともに謎の機械も脳みそも一瞬のうちに消えてしまう。

「あの機械は私の脳みそだったんだろう?」

「そんなところだ」

 正気を取り戻したフォージの前に生身の体となったケーブルが現われ、自分の体を治すように依頼するのだった。

感想

 これから始まる「マーベル・ナウ!」新規タイトルのプロローグというか前日談をいくつか集めたオムニバス・ワンショット。

 「NYSE」はSecret Avengers (Vol.2)のプロローグ的作品で制作陣も同作品と一緒。作中の謎の男が語る迫る危機の端緒としてその他の短編が続くという形になっている。未来から来たという話に面食らうフューリーJr.の初々しさ(姿はアルティメット版&映画版フューリーそのものなのに)とそれほど珍しいことではないと説明するヒルの対比が面白い。あと敵の特徴を短期間で見抜ききちんと対処してみせるコールソンの腕利きっぷりも見逃せない。ちなみにNYSEとはニューヨーク証券取引所の略。

 「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー」は同名タイトルGuardians Of The Galaxy (Vol.3)の制作陣が手がける同誌の主要キャラであるスターロードのオリジン・リトールド。基本的にそれまでのオリジンとは変っていない様子。

 「ダイアモンドヘッド」はNova (Vol.5)のプロローグというよりもAvengers VS. X-Men #12から直接続く話。この新しいノヴァは2011年発売のオムニバス・ワンショットMarvel Point One #1でデビューし、Avengers VS. X-Menで二話ほど出ただけの新人キャラ(日本でも放映されているアニメ『アルティメット・スパイダーマン』に出てくるノヴァも彼なのだけれど)。ダイアモンドヘッドに向かって「あんたの問題って顔が醜い以外に何があるのさ」とか言ってのける辺りスパイダーマンっぽい感じになるのかなと予想してみる。

 「新世界」はYoung Avengers (Vol.2)のプロローグ的作品。なにやら画策してアベンジャーズを作ろうとしているロキ(現在外見は子供、中身はおっさんの方になってる)も気になるところだけどなんと言ってもミス・アメリカが大当たり。彼女は2011年に発売されたミニシリーズVengeance(未読)で初登場したラテン系キャラで、ためらいもなく(それでいて店には迷惑かけた分は払うことを先に言う気配りも見せながら)焼き肉の鉄板にロキの頭を叩き付けようとする剛胆な性格が素晴らしい。瞬間移動で難を逃れたロキを瞬時に追撃するなど戦闘能力も高そうで、それでいて今回明かされた別アース出身という謎な部分もあり、このキャラのためだけにシリーズ追うのもあり。プレビューなどで見たジェイミー・マッケルヴィーの絵はのっぺりした感じでいまいちかなと思ったけど通して見てみるとこれはこれで実に味わい深い絵で結構気に入った。

 「芸術だ!」はFF (Vol.2)の制作陣が送るドゥームに娘を殺された二代目アントマンのささやかな復讐劇。マイクロ化して人体に潜むということをマイク・オールレッドがいつもの調子で凄く奇妙な世界として描いているのが楽しい。小市民的な復讐劇もこれはこれで二代目アントマンに合ってる感じがして良し。

 「クレイジー・イナフ」はCable And X-Forceの前日談的作品。ライターも同誌と一緒の人。内容的にはAstonishing X-Menの「ゴースト・ボックス編」で狂人となってしまったフォージの復活劇とケーブルによるチーム勧誘の話。

 全体としては掌編ばかりだけどなかなか楽しめた。新シリーズへの橋渡しとしてもきちんと機能していると思う。特にNova (Vol.5)Young Avengers (Vol.2)が気になるかな。

2013-01-24

アメコミ語り #35: Uncanny Avengers #1 (2012年/Marvel Comics)

第一話: 新結成

制作陣

ライター: リック・リメンダー
アーティスト: ジョン・カサディ
カラー・アート: ローラ・マーティン

あらすじ

 瞳にフェニックスの姿を焼き付けた男が脳みそを切除され機械を取り付けられている。その手術をする謎の人物が人類によるミュータントへの迫害が起こることを説きながら男に囁く。

「殺られる前に殺るのだ」

 ジーン・グレイ高等学園ではウルヴァリンのスピーチのもと、プロフェッサーXの葬儀が行われた。葬儀に参加した後その足でサイクロプスが収容されている監獄へと出向いたハボックは兄を責めた後、キャプテン・アメリカとソーに出迎えられる。

 キャップはアベンジャーズとXメンの合同チームを作りヒーロー活動をすることによりプロフェッサーXの目指したものを実現しようと考えていた。そしてそのチームのリーダーにハボックを指名したのだった。しかし、柄ではないと辞去しようとするハボック。

 その時、開頭手術の後を残したアバランチが突如ニューヨークの街中で暴れ始める。割れた地面に人々が飲み込まれ、ビルが倒壊する大惨事に駆けつけたキャップたち三人はソーとハボックが人命救助に向かい、キャップがアバランチと対峙する。

 しかしキャップが迫るとアバランチは抵抗もせず「ダムは決壊し、激流は解き放たれた……煽動行動完了!」の言葉を残し投身自殺してしまう。

 一方、夕暮れ時のプロフェッサーXの墓前にスカーレットウィッチが献花に訪れ、生涯かけて彼の夢を守ろうと誓いの祈りを捧げていた。そこに全ての元凶であるMデイをもたらしたワンダをどうしても許せないローグが現れ彼女に突っかかって行く。

 その最中、大爆発が起こり、現れた謎の能力者軍団の攻撃によって、ローグを庇ったワンダが重症を負い、ローグも叩きのめされて、二人とも拉致されてしまう。

 そして……謎の基地では脳みそを誇らしげに掲げるレッド・スカルが高らかにこう宣言するのだった。

「このチャールズ・エグゼビアの脳を使い、レッド・スカルがミュータントの脅威を排除するのだ!」

感想

 「マーベル・ナウ!」の開幕を告げる新シリーズ第一話目は脳みそで始まり脳みそで終わるというかなりショッキングな絵面の一話。

 厳密に言うと今回の時点ではまだハボック率いるアベンジャーズ&Xメン混合チームは結成されていない状態で、今回の対レッド・スカル戦を通してチームとして正式に結成されていくのだろう。

 未だに兄サイクロプスへのコンプレックスありありなハボック、折角教授の墓前で償いの決意をしたにもかかわらずローグに食ってかかられると「私は自分のしたことの責任を受け止めるわよ。でもサイクロプスはどうなの?」と火に油を注ぐことを言ってしまうスカーレットウィッチ、そんなワンダと口論した挙句に激高して彼女をぶん殴ってしまうローグ、とテンション高めな火種があってこの先面白いチームになっていきそう。

 ローグといえば「サイクロプスはあんたが消滅させようとしたミュータントを救うために戦っていたのよ!」と実際の行動とその結果の是非はともかくちゃんとスコットの信念と目的を理解をした発言もしていて凄く好感が持てた。誰からも理解されずに全責任を押しつけられる形で責められるだけじゃあ流石にスコットがかわいそうだし。

 ストーリー的には謎の復活を遂げたレッド・スカル(スティーブ復活の際の戦いで倒されて、跡目は娘のシンが引き継いでいた)と彼の配下の謎の能力者軍団(ローグ達を拉致する際教授の遺体らしき物も一緒に持っているシーンがある)が教授の脳みそを使って仕掛けるミュータント殲滅の陰謀にまだチームにすらなれていないハボックたちがどう立ち向かうのか、この辺が大いに気になるところ。

アメコミ語り #34: アメコミ邦訳本の理想と現実

 こちらの記事を読んでなんとなく考えたこと。

アメコブログ なんか、邦訳の時間差がすごいことになってる話。

 念のため書いておくと、アメ子さんを批判したいわけではない。当り前だが。

 まずは話に上がっているヴィレッジブックスの「ニューアベンジャーズ」と「アストニッシングX-MEN」について簡単に説明しておこう。

 「ニューアベンジャーズ」は2005年に創刊されたマーベル・コミックスのタイトルNew Avengers (Vol.1)の邦訳シリーズ。一作目の『ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト』の発売が2010年だから元々5年の開きがあったということになる。そしてこのシリーズの最大の特徴はなんと言ってもシリーズの一話目から(アニュアルまで含めて)逐一翻訳されている、というところ。

 「アストニッシングX-MEN」は2004年に創刊されたマーベル・コミックスのタイトルAstonishing X-Men (Vol.3)の邦訳シリーズ。つまり一作目『アストニッシングX-MEN:ギフテッド』が2010年の発売だから6年の開きがあったことになる。シリーズ一話目から訳されていたが、二作目の『アストニッシングX-MEN:デンジャラス』以降続刊がない。原書単行本4巻目までは映画『アベンジャーズ』の監督ジョス・ウィードンがライターを務めていた。

 さて、アメ子さんが言うところの邦訳の時間差の問題は大変難しい問題ではある。

 確かにDCの「New 52」からはアメリカ本国の単行本最新刊である『ジャスティス・リーグ:誕生』や『バットマン:梟の法廷』が翻訳されている。それは仕切り直しで0から語られるストーリーであるというところと、もう一つその前振りとも言うべき『フラッシュポイント』が早い段階で翻訳されていたという部分に依るところが大きいと思う。『フラッシュポイント』が翻訳されたのは改変世界の物語であり物語の積み重ねがなくても単発で何とか行けるイベントだったというところもあるし、おそらくは「New 52」の翻訳を見越して早めに仕掛けたからだろう。

 では、問題になっている「ニューアベンジャーズ」と「アストニッシングX-MEN」はどうか。

 実はこの辺りもDCの「New 52」翻訳とあまり変っていない様に思う。前述のように2010年のシリーズ開始当初の時点で2シリーズとも5年の時間差があったわけだが、二誌とも新シリーズであり、その一話目からという形で開始されたこの二誌は色んな人が入りやすいものではなかっただろうか(当時アメコミ翻訳本の発売がかなり不活性で、本国のトレンドを追うこともできていなかったという所も勘案してある)。

 一方で『フラッシュポイント』から「New 52」のような点から線という意味においてもこの二誌の翻訳、当時の日本のアメコミファンの間で鉄板だったマーベルネタである所の「シビル・ウォー」、「Mデイ(ハウス・オブ・M)」、そして「ワン・モア・デイ」に繋がる導火線的な役割を果したと思う。

 両誌とも刊行タイミングから言って『X-MEN/アベンジャーズ:ハウス・オブ・M』発売を見越したイントロダクション的な意味でのシリーズであっただろうし、その成功が『シビル・ウォー』の発売へと繋がり、さらには「シビル・ウォー」での出来事が密接に関わってくる『スパイダーマン:ワン・モア・デイ』(さらにはその続きである『スパイダーマン:ブランニュー・デイ』)へと繋がっていった。そういう意味では意義のあるシリーズではあるだろう。

 ただ元々時間差があった上に「ニューアベンジャーズ」は一年以上刊行されていない時期があったり、「アストニッシングX-MEN」にいたってはシリーズ外の『X-MEN:デッドリー・ジェネシス』の刊行を最後にXメンタイトル自体一年以上も翻訳本が頓挫しおり、ファンが待ち望んでいるであろう「メシア三部作」(およびその延長線上にあるビッグイベント「アベンジャーズVS.Xメン」)邦訳への道筋が全く見えていない現状ではやきもきしてしまうのもしょうがないことではある。

 実はこの先行きの不透明感というのは翻訳アメコミ全体の話でもある。確かに「New 52」はかなりのスピードで訳されてはいる。反面本国ですら単行本第二巻の発売が来月からであり翻訳本の2巻目の発売はいつ発売されるのか、そもそも2巻目は出るのか、52タイトルある内どこまで訳されるのか、という不安や不透明感はあるのだ。

 これはここ数年のアメコミ翻訳ブームの中でつまみ食い的に色んなタイトルを翻訳し続けてきた弊害であり、「ニューアベンジャーズ」のようにシリーズとして続いているものですら不定期刊行であるというアメコミ翻訳本の現状の刊行形態がもたらしたものである。

 90年代後半のアメコミ翻訳ブームをもたらした要因は色々あるが、『Xメン』にしろ『マーヴルX』にしろ『スポーン』にしろ定期刊行されていて安心して次を期待できたこともその一つだろう。小プロが定期刊行から撤退したあと、潮が引くようにアメコミ翻訳ブームが終焉へと向かって行った印象がある。

 現状のアメコミ翻訳ブームは既に当時に匹敵するほどの物になっていると思う。このブームを前回のように単なるブームとして終わらせず、持続的なものとするためにも定期刊行などの安定した翻訳本刊行スケジュールを組んで欲しいと思う。

 個人的にはマーベルなら「アベンジャーズ」「スパイダーマン」「Xメン」、DCなら「バットマン」「スーパーマン」「ジャスティス・リーグ」を中心に毎月通常タイトルを翻訳し、それぞれのユニバースの大まかな流れを追えるようになると良いのではないかなと思う。

2013-01-19

百合語り #48: 遂に始まる百合姫オンラインこと「ニコニコ百合姫」

 情報はこちらを見てもらうとして、『コミック百合姫S』休刊後の連載作品の受け皿として計画されていた旧百合姫オンラインとは違い、本誌連載作品の増刊号的掲載+αというあくまでも本誌の補完的役割を持ったWeb雑誌という感じ。

 企画自体はおそらく『ゆるゆり♪♪』放送終了前後から進んでいたと思うけど、『つぼみ』休刊直後というタイミングに偶数月18日更新ということでなんとなく狙ったような感じになってしまうのは致し方ないか。

 とりあえず軌道に乗って、本誌とは違った色を出せるようになるまで発展できれば嬉しい。

 それはともかく。読もう、壇蜜も読んでる『コミック百合姫』。

2013-01-18

このマンガが(私的に)すごい! 2013

 ま、適当に、ね。

10位: Get Jiro! (Anthony Bourdain、Joel Rose、Langdon Foss/Vertigo/DC Comics)

 奇妙。

 内容的にはグルメ版用心棒。と書くと料理で勝負みたいな感じだが、実際はマフィアのような力を持った二大コック勢力が対立する近未来のLAに流れてきた寿司職人ジローが用心棒のように互いをけしかけて壊滅させようとするかなりバイオレンス描写のある作品。トンデモ本といえばそうだがライターが向こうのグルメ業界で有名な人らしく料理の描写はかなりのもの。あと美味しいものを食べた時のジローさんの笑顔がとても素敵。


(前者がHC版、後者が2013年5月発売予定のSC版)

9位: 『五大湖フルバースト 大相撲SF超伝奇』 (西野マルタ/講談社)

 親子。

 アメリカの国技となった相撲に君臨するロボット横綱という荒唐無稽な設定、絵もストーリーも荒削り、そういう異形な形だからこそ一本芯の通った骨太な父と息子の物語が映えるのかもしれない。物語の冒頭へと帰って行くラストの持つ凄さ、感動はその目で是非味わって欲しいと思う。

8位: 『WE3』 (グラント・モリソン、フランク・クワイトリー/小学館集英社プロダクション)

 悲哀。

 軍によって生体兵器へと改造された3匹の動物たちの脱走劇。追跡する軍との死闘、徐々に悪化する動物たちの状態、全編グロイ描写と悲惨な展開で読み進めるのがかなりキツイ作品ではあるが、だからこそ真っ当な戦いとささやかな平穏が交差するラストシーンが胸にくる。

7位: 『I KILL GIANTS』 (ジョー・ケリー、ケン・ニイムラ/小学館)

 成長。

 第5回国際漫画賞最優秀賞受賞作品。元はイメージ・コミックスから発売されたアメコミで、ライターのジョー・ケリーはスーパーマンやスパイダーマン、Xメンにデッドプールなどを手がけたこともあるバリバリのメインストリーム系アメコミの人でもある。

 内容はというと巨人殺しの妄想を盾に自分の殻に閉じこもり周囲を拒絶して生きる女子小学生バーバラの物語。こう書くとなんだか今流行の中2病的な感じだが、自らの意思で周囲から孤立するバーバラの姿や巨人が持つ本当の意味を考えるとこの作品はもっと普遍的な思春期の成長の物語なのだと思う。半分くらいかなりいらいらする描写が続くけれども、そこから一気にたたみかける流れと物悲しくも快い余韻が残るラストが本当に素晴らしい。

6位: 『ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ』 (大沢やよい/一迅社)

 若さ。

 『コミック百合姫』の新人作家でもかなりお気に入りな作家、大沢やよいの初単行本。線の細いどことなく繊細な絵柄で若さ故の力任せの直球勝負な作品が青くてたまらない。その辺の良さが一番現れてるのが動画生放送サイトを舞台に持ってきた表題作なんじゃないかな。その続編である「ストレンジベイビーズ」が百合姫誌上で連載中だけど、できる限り青いままで突っ走って欲しいなと思う。

5位: Amazing Spider-Man  (Dan Slott 他/Marvel Comics)

 驚愕。

 スパイダーマン生誕50周年の年の最後に投下された核爆弾級の展開。その最初の話である#698。普通の話と思って最後まで読んでそこで明かされる衝撃の事実に読み返すと全てのセリフの意味が違ってくるし、何気ないシーンにもきちんと意味があるのが分かってしまう。そして何より続きが凄く気になってしまう。シリーズ物の一冊の号としては近年最も素晴らしい構成と物語力を持つ号だと思う。

 単行本後追いでは味わえない次の号までの飢餓感。イベントやミニシリーズ中心になりがちな翻訳本では味わえない何年も続く物語の大転換の現場に出くわすというワクワク感。そういういみでは久しぶりにリアルタイムに近い形でアメコミ原書を読むと言うことの面白さを感じたシリーズだった。

4位: 『3秒』マルク=アントワーヌ・マチュー/河出書房新社)

 奇抜。

 セリフもなくコマ毎に直進する視点を鏡面状の物に突き当たるたびに反射させることで、3秒の間に起こった出来事を一つの部屋の中から街中へ、さらには街すら越えてとんでもないところまで描くとんでもない怪作。

 絵の中に描かれたものから物語を読み取り推理するのも良し、ひたすらコマからコマへと突き進むダイナミックな動きを楽しむのも良し、「コミックを読む」と言うことの楽しさが味わえる一冊。

3位: 『裸足のキメラ』 (大北紘子/一迅社)

 抵抗。

 娼婦やDVなど抑圧的・支配的な男がもたらす暴力的な構図を物語に取り込んだ作品が多く、一部には直接的な男への反発の台詞もあるので、単純に男性性嫌悪な本(あるいは作家)として受け取られるかもしれない。

 確かに男性中心社会を舞台にした作品が殆どで、そこへの抵抗が描かれているように見える。しかしよく読めば分かるがそれは表面上のものでしかなく、この作家と本の本質はあくまでも自分を取り巻く世界で息を潜めて生きていく、あるいは世界に流されるままに流され翻弄される主人公達が百合を切っ掛けとしてささやかな抵抗を試みる所にある。

 現代社会ではない異世界風の世界設定を多用しているのも特徴で、その辺も合わせて大北紘子という作家は今百合ジャンル全体で欠けている大きな物語の大きな作品を作りうることができる逸材ではないかと思う。期待したい。

2位: 『少女サテライト』 (はみ/芳文社)

 可憐。

 恒星擬人化日常百合。非日常的な存在の少女達が織りなす日常、という時点で凄い矛盾があるような気がするし、別に恒星擬人化でなくても良かったような気もするが、とにかく恒星たちが可愛いので良し。ふわふわした日常描写からちょっとしんみりくる良い話へ持っていく話が多い辺りきらら系っぽいイメージ。そういう意味では『つぼみ』連載作品の中で最も『つぼみ』らしくない作品かもしれない。私はそこが好きでした。いやまだ終わってないし、(多分)次巻出るし。

1位: Hawkeye (Vol.4) (Matt Fraction、David Aja、Javier Pulido/Marvel Comics)

 ヒーロー。

 「今アメコミのヒーロー物で何がオススメ?」と聞かれたら、胸張って勧めるのがこのシリーズ。映画『アベンジャーズ』のお陰で一躍日本でも有名になったホークアイの最新個人誌。

 このシリーズのホークアイ(クリント・バートン)は1話目の冒頭からビルから落下して命綱を矢で放つという映画の例のシーンやって失敗し車の上に墜落して数ヶ月入院というネタをかまし、他にも女と寝たところを襲われてち○こ丸出し全裸で応戦したり、ギャング団に多勢に無勢でボコられて拉致られたり、と実に情けない姿を見せる。

 勿論決めるところは決めるのもホークアイ。自分の住んでるアパートでギャングが住人の追い出しを謀ると大立ち回りの末それを阻止。その時自分を助けてくれた犬が交通事故に遭うと取り乱すぐらいに心配し、結局自分で引き取ったりもする。自分を助けに来てくれたもう一人のホークアイ(クリントが一時死亡していた時、ホークアイを名乗って活動したケイト・ビショップという少女)がピンチに陥ると颯爽と助けに現れたり。

 Matt Fractionの軽いライティングがこういうヒーロー像にピッタリ来て、クリント・バートンというキャラがこういうヒーロー像にピッタリくる。こんなにも全てがパーフェクトに収まったシリーズはそうそう無いと思う。そしてなによりも内輪もめやショッキングな展開を多用するのではない地に足のついたまっとうなヒーローものであるのがいい。これは日本でも受けると思うので翻訳したら良いんじゃないだろうか。

2013-01-17

アメコミ語り #33: 日本よ、これがアメコミ版シャーロック・ホームズだ!

 先日地上波で『SHERLOCK (シャーロック)』が放映されたから便乗してアメコミのホームズ物を紹介してみる。

 紹介するのはニュー・パラダイム・スタジオズがデジタル出版しているWatson & Holmesシリーズ。全4話のミニシリーズで季刊リリースらしく去年の8月の発売からまだ2話目までしか出されていないけど。

 マーベル・コミックスでEmma Frostなどを手がけたKarl Bollersがライターで、Spider-Man 2099などで知られるベテランアーティストRick Leonardiが絵を担当。

 このシリーズの最大の特徴はなんと言っても現代アメリカはニューヨークのハーレムが舞台だという事。

Whcover

 そして表紙からも分かるように二人は黒人。

Watson_2

 ワトソンはかつて救難員としてアフガンに従軍し、今はハーレムにある急病診療所でインターンとして働いている。

Marie

 ちなみにマリーという奥さんとの間に子供が一人いる模様。

Holmes

 ホームズは元々ベンチャー企業でプログラマーとして働いていたものの会社が倒産したためその道へと踏み込んだ私立探偵。

 ワトソンの勤める病院に運び込まれた急患を追ってホームズが現れたのが二人の最初の出会いで、そこでホームズが披露した推理に感心したワトソンはベーカー街の自宅まで訪問し、そのまま急患の誘拐された彼女救出へと二人は乗り出してく。

Baker

 もちろんベーカー街221Bもハーレムにある。

Hudoson

 ハドスン夫人はこんな感じ。

 誘拐された急患の彼女は救出できたものの、事情を聞き出そうと捕まえた誘拐犯の一人は何者かに射殺される。殺された誘拐犯のスマートフォンから情報を引き出した結果、市内で発生していた会計士殺しとも繋がりがあることが判明し、ネット越しにもう一つの殺人の現場で殺人犯と対峙してしまったホームズたちは次の殺人を防ぐために行動開始する……というのが二話目までの流れ。

 正直正典を読んだのが小学生の頃なのでどこがホームズらしいのかさっぱり分からないのだけれども、ワトソンがホームズの推理に驚いたり、ホームズに振り回されたりする辺りがホームズっぽい感じなのか。アクションシーンとかもあって、RDJの映画の方の影響があるのかも知れない。とりあえず2話目までは突拍子もない設定だけでそこそこ楽しく読めた。

 気になる人はiVerse社のコミックアプリComicsPlusで二話目まで、ComiXologyのアメコミ配信アプリでは1話目まで一話85円で配信されているので読んでみると良いと思う(どちらのアプリもiOSとAndroid対応している、はず)。

2013-01-15

アメコミ語り #32: 日本漫画×アメコミの誘惑

 やはりお山の大将なそばかすブロンドやんちゃっ子のアメコミを圧倒的な財力とテクニックで鬼畜眼鏡な日本漫画が屈服させていくようなそんな関係が、

違う違う、そうじゃ、そうじゃない!(鈴木雅之のコスプレをするウェズリー・スナイプスの表情で)

 えっと、こちらの話。

竹熊健太郎先生の「どうして漫画が日本でこれほど発展してしまったのか」 - Togetter

 事実誤認に基づく迂闊な日本漫画とアメコミの比較にアメコミクラスタが噛みつくといういつも通りといえばいつも通りな流れ。

 勿論まとめを見れば分かるように竹熊健太郎先生は意識して馬鹿にするためにアメコミを持ち出したわけではない。すぐにアメコミの分業体制へと話が流れていくのを見ても、彼自身の読書体験を元に感じたアメコミと日本漫画の違いからある種の創作体制論を導き出したかったのだろうということは分かる。

 ただその比較の論拠となる彼自身のアメコミ読書体験があまりにも貧相だったという所が最大の問題点だった。それが如実に表れたのが、最近発売された60年代から80年代の作品を収録したアンソロジー『ベスト・オブ・スパイダーマン』(小学館集英社プロダクション)を読んでも、日本ほど多用されているわけでもないかもしれないがアメコミでも行われていることがすぐ分かる「吹き出しの多様性日本特殊論」というわけだ。

 アカデミックな研究であれば自分の体験から発した思いつきでもそれを論とする前にある程度資料を集めてそれが正しいかどうか検証するだろう。それが今回はちょっとした資料をあたれば分かりそうなことを調べないままTwitter上で発言しまい、そういう迂闊さが大きな火種になった。

 勿論一般人であればたかがTwitter上の発言でそこまで調べないよ、という言い訳はありかもしれない。しかし竹熊先生は漫画分野でそれなりに知られた人物であるし、漫画を飯の種とする人であり、今回の件も今後の飯の種の話に繋がるものだった。そういう意味ではやはり無頓着すぎたのだと思う。

 一方で今回の件がそれなりの騒動になった背景にはアメコミオタが抱える地雷の存在がある。

 日本のアメコミオタは基本的に日本漫画も読んでいる。別にアメコミを読んでるから偉いとかアメコミも漫画も楽しむ俺すごいでもなく、ただ自分が楽しいと思う楽しんでるだけの人がほとんどだろう。日本漫画しか読まない、という日本のオタクも基本的にはそういうスタンスだろう。

 ところが何らかしらの切っ掛けで日本漫画とアメコミを比べるようなことになると、日本のオタクは露骨にアメコミを日本漫画の下にある物として扱い始める(例えば前述のまとめのコメント欄やはてブコメントでも散見されるように)。

 アメコミも読んだことあるけどやっぱり日本漫画の方が性に合う、とかならまだしもアメコミと漫画の比較をほいほいやってしまうような人は基本的にアメコミを読んでなく、漠然としたイメージ、下手すれば「日本漫画が海外で大人気」程度の知識でアメコミを見下す態度で語る。

 そこには少なくとも半世紀以上にもわたって米国のエンタメ産業の一つとして発展維持されてきた米国のコミック文化に対する理解も敬意の欠片もない。オタクナショナリズム、あるいは漫画国粋主義とも言うべき日本漫画(オタク)優越論で自己の虚栄心を満たす歪んだ姿があるだけだ(「表現規制されたら日本の漫画文化は駄目になってアメコミみたいになる」みたいなことを平気で言う人間がいたりする)。

 そのような酷い連中をいくつか見てきたせいでアメコミオタにとって日本漫画とアメコミの比較は地雷になってしまった。そして今回の竹熊先生も比較した上その前提となる知識が間違っていた、というものの見事な地雷の踏み抜きを見せてしまった、という訳だ。

 個人的には竹熊先生の自らの読書体験で感じたアメコミの読みにくさと日本漫画の読みやすさから日米の違いを理解しようとする試み自体は、ちゃんと資料に当たってきちんと研究したら面白そうとは思っているのだけれどね。

 とりあえずそんな感じで最後に今回の件で感じた教訓めいたことを箇条書きしておこう。

  • 不用意な異文化比較は絶対に避ける。
  • 必要な場合でもきちんと資料にあたって双方の理解に努める。
  • 比較しても優劣はつけない。異文化を見下さない。自国文化を持ち上げない。
  • 間違った部分を指摘されたら素直に頭を下げ、知識を吸収する。

 一番大事なの最後のやつかもね。だって誰だって間違えることはあるし完璧な知識を持った人間だっていないんだから。

2013-01-11

百合語り #47: 『ジョシコーセーの成分。 SCHOOL GIRL OVERFLOW』(ハセガワケイスケ/2013年/アスキー・メディアワークス)

※SPOILER WARNING!!
ネタバレあり。

 念のため書いておくと、恋愛的な意味での百合はここにはない。

 主人公の美樹本花鈴は入学式の日の盛大に遅刻したことと持ち前の自信のなさと自虐的な性格からクラスで友達を作れずにぼっちで浮いた状態になってしまい孤独主義者を高校一年生。自分とは違いあまりにもまぶしく輝くお姫様系美少女で熱烈に好いてくれる友達を何人も持つ隣の席の安比奈ひな子を苦手に思いつつも羨ましく思い、そして強く惹かれている。

 そんな感じだから、割とネガティブ、というか後ろ向きな感情や行動が頻繁に出てくる。例えば雨の日に傘を持ってきた花鈴が持ってこなかったひな子たちが雨の中飛び出し濡れながらはしゃぐ姿を横目に見て傘なんて忘れてれば良かったと思ってしまったり、自分の席で机に伏して寝たふりしながら隣の席の会話に聞き耳立てたり。

 とは言っても、深刻なほど重くはない。浮いているからと言って別にいじめられるわけでもなく、むしろ浮いている=変っているという認識でクラスには受け入れられているし、実はひな子とその友人達にも興味を持たれている。本人が気がつかないだけで。何歩か踏み出せば自然と浮いた状態から地に足を付けた状態でクラスに溶け込めるだろうし、実際ひな子とその友人達ともっと近づいた状態になることを暗示するような描写もいくつかある。ただ残念なことに今回の話ではそこまで行ってはいないのだけれども。それに寮で同室の同級生とはきちんと友達になっているし(他のクラスだけど)、自分と同じような境遇の女の子には積極的にアタックして友達になっている(他のクラスだけど)。

 昔森田公一とトップギャランというグループがヒットさせた「青春時代」という曲に「青春時代の真ん中は 道に迷っているばかり」という歌詞がある(作詞は阿久悠だ)。美樹本花鈴はそういう迷いのど真ん中にいるだけなのだ。そしてそんな彼女を取り巻く人々はとても柔らかくて優しい。だから読んでるこちらの青春のトラウマをちくちく刺激するようなことはあっても絶望的なまでに落ちこむことはない。そういう意味では凄くゆるい。でもゆるいからこそ何度も読み返したくなるような読後の爽やかさが生まれるのだと思う。つまるところ、この作品は素晴らしい青春小説ということになる。

 ただまあ凄く読み手を選ぶ作品ではあるとも思う。大部分が凄くふわふわした感じのpoeticな文体であるため好き嫌いがはっきり分かれそう。poeticな文体だからこそ「ジョシコーセー」的なキラキラふわふわした雰囲気が出せているのだけれども。あとエピソードごとに分かれている短編の詰め合わせであるので文体の壁を乗り越えれば凄く読みやすい、はず。

 肝心な百合的な要素だけれども、冒頭に書いたように恋愛的な要素ではない。しかし花鈴がひな子と物理的に近づい自分が男子中学生だったらと思う程度の反応は見せるし、ひな子を取り巻く友人達は過剰なまでのひな子好きっぷりをみせるし、花鈴の友人にも美少女好きがいる。漫画だったら疑いもなく多くの人が百合作品だと断定してしまう程度には百合ではある。だから百合オタは安心して買うと良いと思うよ。

 本全体としてはキャラ紹介と状況解説的な物語のプロローグに終始した感があるので是非続きが読みたいと思う。いくつか次に続く要素も仕込まれているし、作者も続きを書く気持ちはありそう。そのためにはまず売上げなのだけれどもね。

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