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2013-09-07

映画感想文 #2: 『ワールド・ウォーZ』 (アメリカ/2013年)

 『パシフィック・リム』と二本立てで見てきた『ワールド・ウォーZ』。見た時点では原作小説も読んでなかったし、ゾンビもので制作時に混乱というか揉め事があったみたいというのを何かで見かけたのと日本での宣伝方法が批判されていたことくらいしか知識がなくて本当になんとなく見ただけだったのだけど、これが思いの外面白かった。

 この映画何が良いかというとまずはゾンビがエネルギッシュな所。走るゾンビというのは最近のトレンドの一つで、当然この映画のゾンビも走る。走るというかダッシュしてタックルしてくる。群がって塔のようになって壁を乗り越え滝のようにバラバラ落ちてくる。こんなにエネルギーに満ちあふれたゾンビ見たことない! ってくらい元気元気。元気な君(したい)をみてるとこっちまで元気になるよ!

 二つ目のこの映画の良い所は、そんな疾走ゾンビくんに合わせたかのようにテンポ良く話が進むこと。不安を掻き立てる不穏当なオープニングクレジットシーンから一転ブラピ家族のほっとする朝食風景を描写したと思ったらすぐさま緊張した空気をはらんだフィラデルフィア市内のシーンへと移行し開始十分程度で疾走ゾンビくん大発生の地獄絵図へと突入する。この映画はパートとしてはブラピ家族の脱出、韓国、イスラエル、飛行機、WHO施設の5つにわかれるのだけれども、WHO施設パートへと至る4つのパートが長すぎず本当にテンポ良く進むので気持ち良く見れる。

 そんな気持ちよさに拍車をかける三つ目のこの映画の良いところがブラピ演じる元国連職員のスーパーぶり。世界の紛争地帯を渡り歩いた元国連調査員という設定だからゾンビ大発生に遭遇して短時間でその性質を見抜き対処するのは当り前、ゾンビに噛まれた女性兵の手を躊躇なく切断したり、飛行機内でゾンビが大発生したら躊躇なく手榴弾を機内で炸裂させ開いた穴からゾンビを排出させたり、それで飛行機が墜落しても助かったりと、あまりにもスーパーすぎてブラピが行く先々で周りの人たちが不幸になっていくのとは対照的でコントみたいな印象もあるくらい。

 で。私がこの作品で一番気に入ったのは今まで上げたクラシカルなゾンビ映画から逸脱した要素が最終的にはWHO施設パートのクラシカルなゾンビ映画シーン(閉鎖空間で徘徊する動きの遅いゾンビ(覚醒すると加速するけど)と対峙する)へと帰結するところ。今までさんざんテンポ良く動きの激しいシーンが続いたあとでじっくりとした静のシーンを見せられたら問答無用で緊張感は高まるじゃないですか(なにせスーパーブラピだけじゃなくて普通の人間の同行者が二人も居る)。その緊張感によるドキドキがゾンビ映画を見たって気にさせてくれて本当に素晴らしい。噂によるとロシアでのブラピ無双シーンから差し替えられてこのシーンになったらしいけど、これがあったからこそゾンビ映画として完成したわけで差し替えて正解だったと思う(ブラピ無双も見たいけれども)。

 そしてそのままクラシカルな雰囲気で終わるかというとそうは問屋が卸さないのがこの映画。クライマックスのなんの説明もないままハリウッド式ご都合主義という事さえはばかられるくらいの解決をみせるとんでもないブラピの行動に呆然としていると、ゾンビ映画史上最も爽快感溢れるシーンへと突入して全てが昇華されてしまうわけですよ。あのシーンのあと爆音でロック系のテーマソングかかってそのままエンドロールが流れても良いくらい吹っ切れてた。

 こう書くとアレな映画のように思えるかもしれないけど、あとで読んでみた原作小説も映画とは全く内容が違うのに吹っ飛び加減は同じ(原作小説の日本パートを見よ)だったし、これは良い映画化作品だったとお思いますよ。いや、マジで。

 そういえば感想でこの作品に滲み出る悪意を指摘していた方がいたけれど、ブラピ家族がヘリで脱出する時屋上で真っ先に突入してきたゾンビって前夜に止めてもらった部屋のお父さんで飛び立つヘリにすがりつこうとして落とされるゾンビはお母さんに見えたのだけど、実際にそうだったらこれもまたかなりの悪意の滲み出ている演出だよねえ。

 ちなみにこの映画の直接の原作は同名小説な訳ですけども、その設定などの元になっているフェイクマニュアル本『ゾンビサバイバルガイド』の内容もかなり反映されているので両方読むとより楽しめるかも。

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